製造業の比率から見えるもの
「Manufacturing value added of GDP」は、経済全体が生み出した付加価値のうち、製造業がどの程度を占めるかを示す指標です。ここでいう付加価値とは、製品の販売額をそのまま合計したものではありません。製造の過程で新たに加えられた価値を捉えるため、原材料や部品など、他の企業から購入した投入物の重複をできるだけ避けて経済活動を見ます。
この見方の面白さは、工場の数や輸出額だけでは分からない産業構造を比較できる点にあります。ドイツ語圏の読者にとっても、国内で製造が盛んかどうかを考える際、企業の規模や輸出の強さとは別に、「経済全体の中で製造業がどれほどの価値を生み出しているか」を確認できます。
ただし、この比率は製造業そのものの規模を直接示すものではありません。分母は国内総生産なので、製造業の付加価値が変わらなくても、サービス業や建設など他の分野の動きによって比率は変化します。反対に、比率が上がったとしても、製造業の生産量や雇用が同じ割合で増えたとは限りません。
指標を読み分ける
| 統計の種類 | 主に分かること | 読むときの注意 |
| 製造業の付加価値・国内総生産比 | 製造業が経済全体で占める位置 | 分母である国内総生産の変化も影響する |
| 製造業の付加価値・現在価格 | その時点の価格で見た金額の動き | 物価や為替の影響を受ける |
| 製造業の付加価値・一定時点価格 | 価格変動を抑えた実質的な動き | 基準となる価格体系や改定を確認する |
| 産業全体の付加価値・国内総生産比 | 製造業に加え、建設などを含む産業部門の位置 | 製造業だけの比率とは範囲が異なる |
世界銀行の製造業比率は、各国の公式統計や国民経済計算などを基礎に整理されています。同じ世界銀行の「産業全体」の指標は、製造業だけでなく建設などを含むため、製造業比率と並べることで、製造業以外の産業活動がどの程度含まれているかを考える手がかりになります。両者を混同すると、製造業の存在感を過大または過小に受け取る可能性があります。
現在価格と一定時点価格の違い
国際比較で特に注意したいのが、現在価格と一定時点価格の違いです。現在価格の統計は、その時点の価格で評価されるため、製品価格、原材料価格、為替の変動が金額に反映されます。金額が増えていても、実際の生産活動が同じように拡大したとは限りません。
一方、一定時点価格の統計は、価格変動の影響を抑えながら、数量面に近い変化を追うために使われます。ただし、一定時点価格だから完全に国や時期をまたいで比較できるという意味ではありません。基準価格、換算方法、統計の改定、産業分類の違いを確認する必要があります。
国連統計部門の関連データにも、現在価格で見た製造業付加価値と、一定時点価格で見た製造業付加価値があります。世界銀行の系列と同じ方向を示す場合でも、作成機関、更新時点、採用する国民経済計算の整理方法が異なる可能性があります。そのため、数値の大小だけでなく、どの統計系列を使ったのかを明記することが重要です。
比率を「経済の設計図」として読む
この指標から読み取るべきなのは、製造業が強いか弱いかという単純な判定ではありません。製造業が国内総生産の中でどの位置にあり、他の産業部門とどのような組み合わせになっているのかを考えることです。
製造業の付加価値比率、産業全体の付加価値比率、現在価格の系列、一定時点価格の系列を使い分ければ、産業構造、価格要因、実質的な活動の変化を別々に検討できます。ドイツ語圏の国々を比較する場合にも、単一の順位を作るより、同じ定義の系列を同じ時期について確認し、差がどの要因から生じているのかを丁寧に見る方が有益です。
出典
- 世界銀行「Manufacturing, value added(% of GDP)」
https://data.worldbank.org/indicator/NV.IND.MANF.ZS
- 世界銀行「Industry(including construction), value added(% of GDP)」
https://data.worldbank.org/indicator/NV.IND.TOTL.ZS
- 国連統計部門「SDG Data Portal」
https://unstats.un.org/sdgs/dataportal
- 国連食糧農業機関「FAOSTAT」
https://www.fao.org/faostat/en/#data